Romanticism

バンギャと若手俳優追っかけと二足のわらじ

不条理と正義

俳優某くんの舞台観劇。
舞台作品としての最終的な感想は「???」としか表現出来ないのだけれど、俳優某くんはハマり役でとても良かったので、最終的に良かったのか、微妙だったのか判断するのが難しい。原作未読、俳優某くんの役についてだけ調べて行ったから、作品自体に関してはネットで追える範囲しか予習してない。ので、理解が浅い部分もあると思うけど、とりあえず初見感想。

まずは俳優某くん。ハマり役。こういう役、得意分野だもんね。とは思いつつ、その予想を上回わっていた。冷徹でかなり狂っていて、かつストーリーテラーもする。作品のテンポが変わるときに、1人で舞台にいる時間が数分くらいあって、長台詞をまわす。それが良い。
俳優某くんの演技で1番好きなのは、喜怒哀楽のどれでもでもなくて「狂」。ただ、ずっと彼の演技を見ているはずなのに、いつからこんなに「狂」の演技が得意になったのか、正直思い出せない。今思えば、8年前の映画で、ほぼ台詞のない薬の取引人役をやったときから違和感がなかった気がする。今回も役での有名な台詞を絶叫したりもするんだけど、彼の表現として伝わってくるから良い。

今回の作品で脚本演出をされている方が手掛ける演出作品は、いつもアクションシーンが良かったなと思うので、そこは期待してた。それは今回も期待通り。良かった。動ける演者が多いから、見せ場としても不可欠だったのだろうけれど、足技が特に良い。
効果音の音量自体が大きくて、何度か驚いて動悸がしたけど、BGMも好きな感じだった。あと大道具も。無機質さと複雑さと多面性が融合してて好きだ。

要所要所ではこうやって加点評価出来たのに、演出全体としては、突然謎のダラダラ感が訪れるのが不思議だった。1時間くらいはわりとゆっくり進んでいたのに、残りは猛スピードで話を進められて、描き方もかなり雑になるから、何が起こっているのかよく分からず、ぽーんと置いていかれてしまった感が強い。前半でのこことあそこの無駄を省略すれば、無理にギアチェンジしなくても良いんじゃないかなと思うシーンが何箇所かあった。
あと、そもそも観終わった観客に何を伝えたり残したかったのかなあと。どこに重心を置きたいのか全然分からなかった。うーん、残念。

SFにおける正義とは何か。不条理な世界での「正しいこと」って何だろうか、と思いながら観ていた。結論から言うと、答えは出てない。
常に倫理観や本来的な意味での正義を掲げる役を観て、「うーん?だから?」と思ってしまった。無意味というよりなんだか薄っぺらいなと。あと、ヒロインの思考回路が個人的には本当に無理だった。自分の気持ちは純粋と思っているのか、悪意なく周りを踏みにじる。それを契機に主人公は、不条理な世界での自分の一面を覚醒させる。でも、同性だからこそ、根本的に色々めんどくさい女なんだろうだなと思った。
そんなこんなで主要な役どころにあまり理解が示せず、俳優某くんの演じてた冷酷で狡猾な役の方が逆に人間らしくみえた。役自体のモデルがあれなので、大分狂ってるけど。上記の倫理観の強い人物を偽善者と切り捨てて、自己利益の追求の正当性を淡々と語る。確かに不条理な世界では彼の言うことが真理なような気もした。そして、不条理な世界で死にたくないと喚き叫ぶ。都合の良さに人間らしさがあるなあと。
なんだか性善説性悪説かみたいな話に。個人的にはどちらでもないと思うから、先に述べたように自分で考えていた問いの答えは出ていない。出していない。

今後シリーズ化はしないと思うけど、2.5とはいえ、毛色の違う作品を舞台にした、という取り組みは面白いと思う。そして、見るからにぴったりで、本人もとても楽しみにしている役に配役されたので、一俳優ファンとしては楽しめた。来週も行く。