Romanticism

バンギャと若手俳優追っかけと二足のわらじ

廻る、回る、まわる

舞台「豊饒の海」を観てきた。
珍しくあえて作品名を挙げるのは、時間があるならぜひ新宿高島屋へ足を運んでほしいから。週末がプレビュー公演で、これからが本公演。

三島由紀夫作品が好きで、中でも特に「豊饒の海」が好きというのはもちろんあるけれど、原作から端折られている部分の違和感もそこそこ薄めて、原作の雰囲気や濃淡も上手いこと拾う。舞台作品としても面白かった。個人的には原作が好きな方にこそ一見の価値ありと思いつつ、舞台だけでも引き込まれるはず。多分。個人的には「春の雪」と「暁の寺」が好き。テーマがツボなのもあって、文字から情景が勝手に浮かんでくる。

それで舞台の話。ひとえに演出が良い。4部作を印象付ける冒頭のシーンから、素直に「あ、これ好きなタイプ」と。台詞がないシーンが特に良い。複数人の感情を動きで同時に流れるように表現するのが、秀逸。ただ色っぽいだけじゃなくて、そこに生きてる感情があった。転換時の暗転頻度が少なくて、情景描写もひたすら丁寧だった。あれだけの大作の細部にひとつひとつのこだわりを感じられるのがとても素晴らしい。

同時に再構築することについて考えていた。あれだけの大作を2時間半にまとめるにあたって自分だったらどう組み替えるかな。何を伝えることを重視するのか。そんなことを考えながら観ていた。三島の生というか死の描き方をどうみえるものにするか、難題過ぎる。きっと自分には一緒かかっても出来ない。世の中で勝てないなと思うのは、ルールや枠組みを作るタイプの人たち。物語や音楽だったり、演技で他者の人生を「創り出せる」人たちを羨ましく思うけれど、決してなりたいとも思わない。クリエイティブとはかけ離れた、人の作ったルールを良いように利用して、「そこそこ」上手く生きるのが得意なタイプだからこそ、無い物ねだりで消費者側に徹するに必死になるんだろうな。

話がそれたけど、今回、無駄にチケ運を発揮して最前ドセンで観劇。ひがしでまさひろのスタイルが良過ぎて、目の前にいる時こそ直視出来なかった。普段あれだけ俳優某くんはガン見してるのにね。むしろ目が合っても妙な対抗心でずっとにらめっこするくらいなのにね。神に選ばれしっていうのはああいうことなのかと。脚が長い、長過ぎる…。そして舞台上でもわりと好きなタイプの演技。美しくて繊細な松枝清顕がそこにいた。廻る、回る、まわる。